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チェンジリーダーは時に意表を突き、流れを変える

都知事選を面白くするチェンジリーダーを待望して・・・

東京都知事選挙の告示日が、いよいよ6月20に迫っています。50人上が立候補すると言われる中、どうやら小池百合子現知事と蓮舫参議院議員の対決を軸とした構図になりそうな情勢ですが、一般市民の目からみて何が対決の「軸」なのか分かりづらく、今一つ盛り上がりを欠いている感は否めません。

もう少し面白い展開にならないものかなぁ・・・と考えていた時に、ふと石原慎太郎さんが当選した1999年4月の都知事選のことを思い出しました。のちに「後出しじゃんけん」と評されたように、石原さんは、告示日を15日後に控えた同年3月10日に突如立候補を発表します。すでに有力候補は出揃っており、政策討論なども熱を帯びていた時期です。自民党本部と公明党は、国連事務次長を務めた明石康さんを推薦し、それ以外にも、鳩山邦夫さんや舛添要一さんなどが候補者として名を連ねる乱戦模様の中に、事前予告も政党の後ろ盾も何も無くいきなり斬り込んできたのが石原さんだったのです。

意表を突く立候補声明で、一気に石原さんが選挙戦の「台風の目」となりました。既存の政党・組織のしがらみなど一切気にせずに、歯に衣をきせずにものを言い、行動する、という石原さんのスタイルが、「既成の枠にとらわれずに都政を変えてもらいたい」という無党派層の心情に響き、支持を広げていきました。「石原軍団」を動員したプロモーションも、こうしたイメージ醸成を加速させる上で一役買いました。

石原慎太郎氏 1999年東京都知事選第一声

土壇場で参戦してきた石原さんですが、「東京から日本を変える」を枕詞とする彼のメッセージは、かねてから周到に準備されていたかのような緻密さと破壊力を兼ね備えていました。その柱となっていたのが、次の3つのポイントです。

  • 時代認識: 財政、教育、福祉、経済・金融、環境などの分野で東京が直面している「危機」は、日本全体の危機を象徴するものであり、もっと言えば、世界全体の危機を先取りするものとも言える。
  • ソリューション: こうした危機に既成の「行政主導・官僚主導」のやり方で対処しても限界がある。民間の知恵や手法を大胆に取り入れて、効率的・効果的な改革を断行するべきだ。日本で最も成熟した東京(都民)には本来そういう知恵や力がある筈だ。
  • 差別化: リーダーとしての「発想と行動力」はある。作家として培ってきた独自の発想に加え、大臣在任中を含め国会議員時代に官僚を動かし、過度の対米従属にも疑問を投げかけ、政治家だからこそできる改革を数々成し遂げてきた実績がある。

東京都民のプライドをくすぐりながら、今回の都知事選は単に都の未来を選択するだけの話ではなく、日本全体の危機を乗り越えていくための突破口になるべきものだと位置づけ、既成の政治・行政の権力と真っ向から戦ってきた自分が先頭に立って東京を変えるのだ、と本気で訴えたのです。

日本の「大統領選」なのか?とでも思わせるような大胆かつ大局的なメッセージです。それを、石原さんが、自分のこれまでの政治家としての経験や知見を総動員し、自民党や官僚に屈することなく実行する、とまさに「体を張って」訴えて回った結果、二位の鳩山邦夫さんにダブルスコア近い差をつけて圧勝します。

石原さんの勝利は、他の自治体の首長にも大きな脅威になりました。首長は住民の直接投票で選ばれるという意味において、大統領制そのものです。どれだけ行政経験や既成政党の支持をバックにした現職でも、戦略的に民意に訴えかけるチェンジリーダーが突如現れて、一夜にして寝首を掻かれることがあり得るのだと、改めて思い知らされたからです。

さて、今回の都知事選を面白くしてくれるチェンジリーダーは現れるのでしょうか。よい意味で期待を裏切る、型破りな論戦を期待したいところです。

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