楽観論と悲観論が混在する中で
日経平均が史上最高値を更新していよいよ「日本復活」かと報じられる一方で、2023年の日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界4位に転落したと騒がれたり・・・何だか楽観論と悲観論が混ぜこぜになっている感じですね。
実は、あまり報じられていませんが、日本経済の現実を直視する上で最も重要な最近の出来事は、GDPを就業者数で割った「就業者1人当たり労働生産性」が、OECD39か国中で31位と過去最低を記録したというニュースです。元々長きにわたり低落傾向にあった日本の1人当たり労働生産性ですが、G7の中ではぶっちぎりの最下位であり、ついにお隣の韓国にも抜かれて、OECD加盟国中でも「下から数えた方が早い」状態になってしまっています。
これがなぜ重要なのでしょうか。賃金は、「労働生産性×労働分配率」で決まるので、労働分配率が一定であれば労働生産性が上がらないと賃金も上げられないからです。
事実、労働生産性の国際順位の低落トレンドを映すように、日本の賃金水準は過去数十年にわたり低迷してきました。賃上げを求める世論が盛り上がっていますが、労働生産性が上がらないまま賃上げをしていくとどうなるか・・・はい、そういう企業はいずれ潰れます。だから、「賃上げ、賃上げ」と叫ぶ前に、どうやって労働生産性を上げるかを真剣に考えないといけない筈なのです。
「労働生産性が低下した」というと、一人ひとりの働き手の問題のようにも聞こえますが、過去数十年のうちに日本人が急に怠惰になったり不真面目になったわけではありません。むしろ、従業員の労働がより高い価値として売れるような仕組みを考えるのは、経営者の責任なのです。コスト削減ばかりに目が行き、「良いものをより高く売る」ための仕組みづくりを怠ってきたことが、日本全体の労働生産性低下(とそれによる賃金の伸び悩み)を招いたと言っても過言ではありません。
昨今「賢い値上げ」をした企業の業績向上が注目を集めていることも、こうした文脈でとらえる必要があります。「コスト削減・効率化」一辺倒だった経営者のアタマの構造に変化の兆しが出てきていると言えるかもしれません。では、「賢い値上げ」を実現するために求められる 経営者のアタマの構造とは、一体どういうものなのでしょうか?
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