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なぜ今、チェンジリーダーが必要なのか(4)

「夢を語る経営者」に求められる資質と戦略とは

新年度のスタートとなる2024年4月1日。日本経済新聞朝刊トップには、「夢を語り始めた経営者」という見出しが踊っていました。主要企業の社長に対して実施した調査において、多くの社長が「夢がある」と回答し、日本企業が縮小均衡の経営から脱却しつつあると報じたのです。

同記事は、「社長の語る夢に共感した従業員が成長のエンジンとなり、動き出した会社にはお金も人も集まってくる」と、経営者の抱く夢の効用を積極的に評価しています。まさに、社長自身がチェンジリーダーとなって「夢」を語り、これまでとは異なる新たな次元でイノベーションを引き起こしていくことで、新たな価値創造が加速することが期待されているのです。

しかし、「社長の語る夢」を起点として実際にこうした好循環を生みだしていくには、「夢」を語る側に周到な戦略が求められます。栗山英樹さん(前・野球日本代表監督)の言葉に「夢は正夢」というのがありますが、話を聞かされた方が、これは「絵空事」ではなく「正夢」だと感じて自身の発想や行動を変えていくことが必要だからです。

前回のブログでは上の図を用いて、「イノベーター」と目される一部の企業が、イノベーションの対象を社会の「制度・ルール」や、さらにその背景にある人々の「ライフスタイル・価値観」にまで拡張して取り組んでいることに触れました。彼らは、チェンジリーダーとして夢を「正夢」にしようと奮闘しているのです。

こうしたチェンジリーダー企業やその経営者の発想・行動と、その他の企業との違いは何か?それは、次の3つのことを戦略に組み込んで実践していることにあります。

  • Envision:強みを再定義し共有可能なビジョンを示す
    潜在的な社会のニーズや課題を掘り起こし、目先の損得勘定の次元を越えてありたい未来の姿を大胆に構想し、それを皆が共感・共有し得る形で言語化することです。その実現にむけて、自社の強みをこのように活かしいていきたい、こうすればきっと活かしていけるはずだ、という「自社ならでは」の味付けを施すことで、差別化が図られ、求心力が備わります。
  • Engage: 「ヨコ割り」で新たなつながりを築く
    いくらビジョンを高く掲げても、これまで築かれた組織・業界・地域などの「タテ割り」構造が強くて、結局何も変わらないということがよくあります。皆目の前の「個別最適」の論理で仕事をしている方が、楽だしリスクも取らなくて済むので、アタマで分かっていてもそう簡単に行動を変えないのです。「ヨコ割り」での新たなつながりや協働の価値を実感できる場を創ったり、これまで「枠の外」にあると考えられていたプレーヤーを積極的に招き入れたりして、人の意識に潜む現状維持バイアスを打ち破っていく必要があります。
  • Inspire:自発的・双発的な意識・行動変革を促す
    チェンジリーダーが一人で何でもやろううとしても限界があります。チェンジリーダーのビジョンに共感し自ら発想や行動を変えていく人を見つけたら惜しみなく賞賛し、それを「その他の人々」にも効果的に意味づけて伝えることで、お互いがお互いを刺激し合い高め合うような好循環サイクルを創り出せたらしめたものです。人々の意識・行動変革があたかも自己増殖を繰り返すように進むことで、ビジョンを具現化したイノベーションが加速されます。

経営者が単に「夢を語る」だけでなく、それを新たな価値創出の実現につなげる真のチェンジリーダーになるには、以上の3つを戦略的に実践する心・技・体を備える必要があります。声にならない声に耳を傾け、それに応えるビジョンを自らの言葉で発信し、幅広い関係者に働きかけ、現状維持バイアスを越えて皆に変革を促す・・・このように、チェンジリーダーには人の意識に働きかける「コミュニケーション巧者」としての資質と戦略が絶対的に必要とされるのです。自分でそこまでやるのは無理だと思うのであれば、自分の回りにそういう資質や戦略眼を有する仲間を持つべきなのです。

日本人は「コミュニケーション下手」だとよく言われますが、Envision/Engage/Inspire というチェンジリーダーに求められる3つの要素を遺憾なく発揮している日本人リーダーも確実に存在します。以降のブログでは、こうした例を紹介しながら、チェンジリーダーに求められる心・技・体について様々な角度から考察を深めていくことにしましょう。

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